超失敗回復術

(プレ研での発表の草稿です。蔵出し。)

■導入
仕事には失敗がつき物です。もちろん、失敗はしなければしないに越したことはないのですが、人間ですからときには失敗します。失敗が不可避なものであるである以上、失敗をしないことと同時に、失敗した後にどうするかが問題になるわけです。

■痛みを切り離す
いきなり少し話がそれますが、医学用語で幻肢というものがあります。これは、手足の切断手術を行なった患者が、なくなった後でも手足の感覚を残している状態のことを言います。たとえば肘から先がなくなったとして、もうないはずなのに、指先の感覚があったり、ときにはないはずの部分の痛みを感じたりもするそうです。

実はこれを応用すると、痛みを紛らわすことができます。例えばタンスの角に足の小指をぶつけてしまった、などの耐えがたい痛みを紛らわす方法です。まず、患部が指先だったとしたら、その前から意識の中で切り離します。指先を、痛みを感じる自分の指としてではなく、痛覚に電気信号を送る物体として、客観的に捉えるのです。話がいささか哲学的というか、精神面に偏りすぎているような気がしますが、これは科学的な話です。肉体上の問題さえも、意識で切り替えることが可能なのです。とすれば、心理的な問題が、意識で切り替えることが出来ないわけがありません。

■失敗を切り離す
この訓練をつむと、仕事上の失敗にも生かせます。何か失敗をしてしまったとき、たいていの人は落ち込みます。しかし、落ち込んでくよくよしている状態というのは、思考が過去の失敗に占有されていますし、注意が散漫になっていますので、次の失敗を呼び込みやすい状態です。例えば、話を聞いてないと怒られたのに、怒られたことが気になって次の指示を聞き逃してしまった。こうなるともうドツボです。

こうならないために、失敗を自分の一部から切り離します。意識上のリセットボタンを押すわけです。失敗を忘れるわけではありませんが、失敗は失敗として、とりあえず脳内のフォルダにパッケージして格納してしまいます。もちろんこれはあとで取り出してゆっくり分析しなければなりませんが、その場で無駄にくよくよしても事態は好転しません。

これは仕事上の失敗でもそうですが、他のどんなシーンでもそうです。例えば、デートをしたときに、遅れてしまったとします。相手は遅刻したことを責めます。でもひとしきり謝って、相手が許してくれたのに、自分がションボリしたままだったらどうでしょうか。楽しいデートが台無しになってしまいます。
あるいは、僕は現在空手をやっていますが、3本先取の試合をすることがあります。こういう短い試合では、ポイントを取られたあとに、いかに頭を切り替えられるかが勝負の分かれ目となります。

■儀式を行なう

一流のスポーツ選手には『スイッチング・ウィンバック』と呼ばれる精神回復法があるそうです。選手が絶対的なピンチに追い込まれた時、それまでの試合経過におけるショックや失敗、恐怖をスイッチをひねるように心のスミに追いやって闘志だけをひき出す方法です。
そのときスポーツ選手は心のスイッチを切りかえるためそれぞれの儀式を行います。『深呼吸する』『ユニフォームや道具をかえる』などです。

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失敗後ではありませんが、例えばイチローが毎回バッターボックスに立ったときに同じ動作をするのも、一種の儀式と言えるでしょう。スポーツの専門用語で、「心身ともに最高のパフォーマンスを発揮できる状態」のことをZONEと言います。イチローの儀式は、このZONEに持っていくための儀式です。スポーツ選手には、この“儀式”を有効に使っている人が多いようです。格闘家のヴァンダレイ・シウバは、リングに上がるといつも手首をぐるぐる回しています。ムエタイの選手達は 試合の前にワイクーという独特の踊りを踊ります。踊りながら、自らの勝利を神に祈るわけです。これはまさに、ZONEにもっていくための体系化された儀式と言えるでしょう。

■新しい気持ちで仕切りなおす
かくして、意識を切り替えたあとは、また前向きに仕事を続けましょう。ただし、あまりニコニコしていると、「あいつは反省していない」といわれてしまうので、失敗した直後はしっかりと反省し、神妙にしたほうがいいかもしれません。

■まとめ、注意
この方法は、失敗を単純に忘れる、失敗しても気にしない、あるいは問題を先送りにする、というものではありません。失敗は常に研究して、2度と同じことを繰り返さないようにしましょう。また、「ほうれんそう」の原則も忘れてはいけません。その失敗が重要なものであればあるほど、早めに上司に報告するように心がけましょう。

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